見通せない未来、だからこそ必要な仏教的世界観
21世紀に入っておよそ20年、これからの世界の未来を予測することがとても難しい時代を私たちは生きています。そんな時代の中で、私たちが生きていく指標やよりどころも大きく揺らいでいます。「お金」、「科学技術」、「仕事」、「家族」、このような社会や価値観の変化の中で、選択肢は多様になりましたが、ゆるがない「軸」を作ることは簡単ではありません。そこで、人類が積み重ねてきたさまざまな叡智、 科学や芸術、哲学、そして2,500年続く「仏教」が、生きるための「軸」を形づくるヒントにならないだろうかと考え、それらを横断的に学び、双方向に対話をし、実際に体験できる場をめざす、現代版寺子屋「スクール・ナーランダ」を開校しました。
世界最古の大学、智慧を与える場所
西暦427年にインド北部に建てられた世界最古の大学の一つ「ナーランダー僧院」が名称の由来です。この僧院は、仏教だけでなく、哲学、医学、天文学、数学などを研究する総合大学でもあり、唐から訪れた玄奘や義浄もこの僧院で学びました。「ナランダ」は「蓮のある場所」という意味。蓮は智慧の象徴であるため、「智慧を与える場所、智慧を授ける場所」と解釈されます(ナラン=蓮、ダ=与える) 。このことから「スクール・ナーランダ」のロゴデザインにも蓮の花があしらわれています。
若者との新たな関係づくり
「スクール・ナーランダ」では、10代から20代の若者と仏教・浄土真宗との間に、若者のニーズや課題に応える多様な接点を用意することで、これらを「入り口」として新しい関係を作っていきます。
多様な学びの場、お寺の本物の空間で
仏教をはじめ、科学、芸術、哲学、経済学など、多様な分野の専門家を講師として招きます。そして、世界遺産に認定されている京都の西本願寺をはじめ、全国の寺院の歴史ある空間が教室となり、お寺という空間の中で、仏教文化に触れ、「浄土真宗のみ教え」を学びます。
双方向の対話、体験プログラム
講師と参加者、参加者同士の双方向対話型の授業や、各地域の魅力や課題に触れるフィールドワークやワークショップをプログラムに盛り込みます。
若者と共に企画運営、「チーム・ナーランダ」
企画運営に、参加対象と同世代の若者たちにも参画してもらっています。彼らを「チーム・ナーランダ」と呼び、各開催地でメンバーを募り、共に企画を作りあげます。そして開催後も子ども・若者ご縁づくり推進室や教区と継続的に関わってもらい、関係を築いています。
「スクール・ナーランダ vol.1 京都」
日時2017年2月4日(土)・5日(日) 10:00~17:30
会場西本願寺、伝道院 (京都市下京区堀川通花屋町下ル)
対象15歳~29歳
テーマわけへだてと共感
私たち人類は「他者と共感して社会を形成する」能力を持っています。同時にそれは「共感」する集団以外を認めない「わけへだて」を生み出すことにもつながります。自己と他者あるいは世界との「わけへだて」と「共感」について、ロボットや人工知能など新しい技術や音楽・人類学・仏教など、多様な視点から考えました。
講師天岸淨圓(浄土真宗本願寺派僧侶)
小池秀章(浄土真宗本願寺派僧侶)
川瀬慈(映像人類学者)
環ROY(ラッパー、音楽家)
高橋英之(認知科学者)
森本千絵(アートディレクター)
「スクール・ナーランダ vol.2 富山」
日時2017年3月4日(土)・5日(日) 10:00~17:30
会場飛鳥山善興寺 他 (富山県高岡市中田4500-1)
対象15歳~29歳
テーマ「土徳 - 土地からのいただきもの」が育むものづくり
富山県高岡市は、400年以上続く鋳物技術で日本の仏具の95%を製造する「仏具の里」。実直で勤勉な職人たちの気質は、豊かな自然と「真宗王国」と呼ばれるこの地の精神風土(土徳)から生まれるものです。土徳の風土の中で伝統の技を受け継ぐ富山の職人たちの魅力と課題や他力(人智を超えた「はたらき」)と芸術表現との関係について学びました。
講師太田浩史(真宗大谷派僧侶)
飛鳥寛静(浄土真宗本願寺派僧侶)
能作克治(金属鋳物メーカー)
島谷好徳(鍛金職人)
観山正見(天文学者)
内藤礼(美術家)
「スクール・ナーランダ vol.3 東京」
日時2018年3月3日(土)・4日(日) 10:00~18:15
会場築地本願寺 (東京都中央区築地3-15-1)
対象18歳~29歳
テーマ「わたしのため」と「あなたのため」のバランス
わたしたちは社会の中で他者と共存しながら生きていますが、現代社会における他者との関わり方はさまざまです。どのように「わたしのため」と「あなたのため」のバランスを取って、社会の中で共存していくのか。科学、芸術、仏教、それぞれの知見から学びました。
講師小池秀章(浄土真宗本願寺派僧侶)
葛野洋明(浄土真宗本願寺派僧侶)
入來篤史(脳神経科学者)
アン・サリー(音楽家/内科医)
林要(ロボット開発者)
三島有紀子(映画監督)
「スクール・ナーランダ vol.4 京都」
日時2019年2月9日(土)・10日(日) 9:30~17:00
会場西本願寺、伝道院 (京都市下京区堀川通花屋町下ル)
対象10~20代
テーマ十人十色の価値観が表現できる社会を真剣に想像してみる。
インターネットなどテクノロジーの発達によりさまざまな新しいコミュニティも出現している時代にあって、多様な価値観や個人のあり方が共存していくにはどうしたらよいのか。ファッションやダンスの世界で表現するクリエーターや進化論から人類を見つめる科学者、文章をコミュニケーション手段とするライター、そして「仏さまの世界」という超越的な視点をもつ僧侶に学び、ともに考えました。
講師藤丸智雄(浄土真宗本願寺派僧侶)
武田正文(浄土真宗本願寺派僧侶/臨床心理士)
皆川明(minä perhonen代表、デザイナー)
島地保武(ダンサー、振付家)
佐倉統(科学論研究者)
夏生さえり(フリーライター)
「スクール・ナーランダ vol.5 佐賀」
日時2020年2月8日(土)・9日(日) 9:30~17:00
会場願正寺 (佐賀市呉服元町6-5)
対象10~20代
テーマあなたは、あなたが食べるものでできている。
~生きものの営み、土地、テクノロジー、「食」をめぐる考察
土地や自然、生きものや生産者と「食べ物」を通して関わり合っていること、バイオ・テクノロジーによって生物はどう変化していくのか、「いのちを取り込むこと」を仏教ではどのように捉えているのか。多様な講師陣から「食」をめぐる様々な物語を聞き、ともに考えました。
講師松月博宣(浄土真宗本願寺派僧侶)
花岡尚樹(浄土真宗本願寺派僧侶)
藤島皓介(宇宙生物学者)
長谷川愛(アーティスト/デザイナー)
船越雅代(料理家)
嬉野茶時(嬉野茶生産者ユニット)
特別協力弓削啓太(横浜「SALONE2007」シェフ)
詳細は、現代版寺子屋「スクール・ナーランダVol.5 佐賀」レポートを御覧ください。